写真: BBC ニュース (上), TBS ニュース (下)

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自民党がまたしても総選挙に勝利した。今回も、である。……まあ、そうなるよね、という感じではある。前回の記事では、「中道改革連合(中道)」とは何か、そして主要野党2党の合併が選挙を目前にしてどのような意味を持つのかについて整理した。本稿では、実際に中道がどのような結果を出したのか、なぜ伸び悩んだのか、そして自民党がここ数年の不安定な時期を経てどのように立て直したのかを見ていく。

まずは近年の自民党の状況から振り返りたい。以前に私が書いた、前党首であり首相だった石破茂に関する記事もぜひ読んでほしい。そこでは、彼の政権下で自民党の支持率が低下していたことを分析している。それでもなお、自民党は選挙に勝ち続けていた。その背景には、日本の政治構造そのものがある。2009年から2012年の記憶は、いまだに大きな影を落としている。当時、自民党が政権を失い、民主党主導の新政権が誕生したが、スキャンダルや期待外れの政策に苦しんだ。この経験は、多くの有権者、特に高齢層にとって「自民党には問題もあるが、やはり無難な選択肢だ」という認識を強める結果となった。1 つまり、支持率が低迷していた時期であっても、自民党には一定の基盤が残っていたのである。

やがて石破は支持率の低下を受けて退陣し、2025年後半に高市早苗が後任となった。この交代は、当初の予想以上に大きな意味を持つことになる。

選挙に向けた数ヶ月の間に、高市の存在感は急速に高まった。特に外交面で、より強硬な姿勢を打ち出した点が大きい。台湾有事の際、日本は傍観しない可能性があると示唆した発言は、中国から即座に反発を招いた。2 中国国内では、日本との観光や経済関係を見直すべきだという声も上がり、単なる発言にとどまらない現実的な影響を伴った。こうした台湾や中国に関する発言は海外では批判も受けたが、国内では異なる受け止め方をされた。3 多くの有権者にとって、それは地域の緊張が高まる中での「強さ」の表れと映ったのである。さらに、彼女の人気上昇には、アメリカ大統領ドナルド・トランプとの関係も影響していた。評価は分かれるところだが、安倍晋三元総理大臣とトランプの「特別な関係」を思い起こさせるものであり、石破政権下では見られなかった日米関係の雰囲気を再び感じさせた。4また、移民政策においてより厳格な姿勢を打ち出したことも、この問題に明確な方向性を求める一部の有権者の支持を集めた。5

そして特に注目すべきだったのが、若年層からの予想外の支持である。これまで政治に関心を示してこなかった若者の間でも、首相に対する関心が高まり、SNS上でトレンドになるなど、日本の政治家としては異例の現象が見られた。男性中心の政界において女性であることも、若者にとって象徴的な意味を持った。「サナ活」と呼ばれる現象では、彼女のファッションやバッグなどに注目し、まるで著名人のように追いかける動きも見られた。6 7 この言葉は日本語版Wikipediaにも掲載されるほど広まり、「サナマニア」という表現も複数のメディアやSNSで使われた。8 これは石破のイメージとは対照的だった。特に若年層からの支持は限定的で、むしろSNS上での批判や距離感によって形作られていた側面が強く、積極的な支持とは言い難かった。

そんな中、1月に動きがあった。14日、立憲民主党代表の野田佳彦と、公明党代表の斉藤鉄夫は、両党が衆議院で合流し「中道改革連合」を結成すると発表した。右傾化していると見られていた日本政治を中道に引き戻す狙いがあったが、この発表は突然で分かりにくいものでもあった。立憲民主党支持者の中には公明党に否定的な人も多く、その逆も同様であり、CRAに投票すべきか迷う有権者も少なくなかった。これは一時的な連携なのか、それとも恒久的なものなのか。なぜ衆議院だけなのか。そして、なぜこのタイミングなのか。こうした疑問に対する明確な説明は最後まで示されなかった。

その数日後の1月19日、高市は衆議院の解散と、2月初旬の総選挙実施を発表した。就任から約3ヶ月半が経過した時点で、国民が自身の政権運営に満足しているかを問うとともに、自民党と日本維新の会(維新)との新たな連携についても評価を仰ぐ狙いだった。これは計算された動きだったと言える。彼女の人気は上昇中であり、野党はまだ体制を整えきれていなかった。このタイミングは、彼女にとって極めて有利だった。

結果として、自民党と維新は明確な勝利を収めた。それは一夜にして党そのものが変わったからというよりも、高市が流れを引き寄せ、野党が対応しきれなかったためである。一方で中道は大きく失速した。自民党は議席を198から316へと増やしたのに対し、中道は172から49へと大きく減らした。9 この結果を受け、野田と斉藤は責任を取って辞任し、わずか3週間で共同代表の座を退くこととなった。

もし中道が存在しなかった場合、あるいは立憲民主党と公明党がより緩やかな協力関係にとどめていれば、立憲民主党は勢いを築き、2012年以来初めて政権に挑戦できた可能性もあった。しかし実際には、この合流の進め方が逆効果となった。野田と斉藤の判断ミスや、選挙直前というタイミングの悪さによって、両党はかえって弱体化してしまったのである。大きな政治的変化を選挙直前に打ち出したことで、有権者に十分な説明をする時間もなかった。

では、この結果は何を意味するのか。何よりもまず、これは高市の選挙だったと言える。彼女個人の勢い、イメージ、そしてタイミングが、自民党の勝利に大きく貢献した。これは単なる政党の復活ではない。また、野党の準備不足も自民党の圧勝を後押しした要因だった。今後、野党がどう立て直すかは、新たに中道代表となった小川淳也のような人物にかかっている。有権者にとって分かりやすく、説得力のある存在へと再構築できるかが問われるだろう。そのためには、メッセージの簡素化、内部矛盾の整理、そして「何に反対するか」ではなく「何を目指すのか」を明確にすることが必要になる。

現時点で言えるのはシンプルだ。自民党が勝ったのは、単に党が強かったからではない。適切なタイミングで党首が強く、対抗勢力が弱く見えたからである。

1 Asahi Shimbun, “Voters wary of opposition after past failures,” https://www.asahi.com/ajw/articles/15480867

2 Politics Today, “The Breakdown in Japan-China Relations,” https://politicstoday.org/the-breakdown-in-japan-china-relations/

3 TBS NEWS DIG, “世論調査:高市首相の台湾発言について,” https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2333600?display=1

4 JBpress, “『日中友好』という蜃気楼と台湾有事発言がもたらした影響,” https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/91812

5 The Japan Times, “Takaichi makes final appeal to voters ahead of election,” https://www.japantimes.co.jp/news/2026/02/07/japan/politics/takaichi-final-appeal-voters/

6 第一生命経済研究所 (Dai-ichi Life Research Institute), “高市政権と日中関係・台湾問題に関する分析,” https://www.dlri.co.jp/report/ld/534431.html

7 DIME, “高市首相の台湾発言に対する世論と評価,” https://dime.jp/genre/2051129/

8 The Guardian, “’Sana-mania’ grips Japan as ultra-conservative Takaichi expected to secure election landslide,” https://www.theguardian.com/world/2026/feb/06/sana-mania-grips-japan-as-ultra-conservative-takaichi-expected-to-secure-election-landslide

9 The Japan Times, “Japan election chart,” https://www.japantimes.co.jp/election-chart/

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